2014年5月2日金曜日

祝福短編3

 手紙が来た。

 何処からかは知らないが、ダクネス宛ての手紙である。
 この世界では、紙は高級品だ。
 その高級品である手紙を貰える事自体、ある種貴族ならではのステータスと言えるのだろうか。
 手紙を日に透かしてみたりと色々しながら、部屋にいるであろうダクネスの下へ。
 そういや、この世界では年賀状とかそんな風習はあるのだろうか。
 クリスマスカードとか、そんな話も聞いた事が無いが。
 そんなどうでも良い事を考えつつ、ダクネスの部屋のドアを……。

「ダクネス、手紙ー。宛名は無いが、どうせどっかの貴族から……」
 ドアを……。

 俺は、ドアを開けた状態で固まっていた。
 そして、固まっているのは俺だけではなく、ベッドの前で前屈みの姿勢で立っていたダクネスも。
 ダクネスの、白く滑らかな肌が目に焼き付けられる。
 前屈みの体勢の所為で、サラサラの金髪が邪魔……、いや、上手い具合にたわわな胸の先の大事な部分を隠している。
 そして、あんぐりと口を開けたダクネスは、両手で白いパンツに手を掛けて、今まさに、それを…………!

 …………早い話が、上半身裸でパンツ一枚のダクネスが、着替えの最中だったのか、その最後の下着も下ろそうとしていた所だった。
 この俺とした事が、こんな初歩的なトラップに……!

 ダクネスが、深く、深く息を吸う。
 そう、これはまさに叫ぶ前の……ッ!
「……ッ! ……ッ!?」
 ダクネスが、両手で胸を覆い隠し。
 そして、目を見開きくぐもった声を漏らしている。

 俺の手で塞がれた口の隙間から。
 ……俺は、なぜか咄嗟にダクネスの口を塞いでいた。

 ダクネスが、ゴクリと唾を飲む音がした。
 どうやら身動きが取れないらしい。
 そりゃそうだ、胸を隠している手を離すと、もれなく俺に見られてしまう。
 しかし、今の状態もかなり際どい。
 上半身裸で手ブラ、そして下はパンツ一枚だ。
 そんな自分の置かれた状況に改めて気付いたのか、ダクネスの頬がみるみる内に朱に染まる。
 それは頬だけではなく、真っ白い肩の部分までもが赤く火照っていった。
 ダクネスの目尻にジワリと涙が滲み、その目が何かを訴える様な眼差しに……!

 止めろ、違うんだ!
 せめて怒るとか睨むとかしてくれないと……!
 どうしよう、どうしてこうなった。
 ありがとうございます、ありがとうござい……、違うそうじゃない!
 俺はできる男だ、冷静になれる男だ、こんなラノベや漫画でよくあるうっかりエロ展開だなんて難なく乗りきれるはずだありがとうございます!
 とりあえず手だ。
 手を離さないと……!
 俺は相変わらず手ブラ状態で涙目になり、大人しくしているダクネスを見た。

 さ、叫ばないよな?
 いや、叫ばれたからってどうだってんだ、不慮の事故であって別にやましい事しに来たんじゃない。
 そうだ、手紙だ! 持って来た手紙を渡そう!
 そうすれば、なんだ手紙かーと笑い話に……!
 俺は手に持っていたはずの手紙を……。

 …………手紙が……?

「あるえー? 手紙ー?」

 それは、廊下から聞こえてきたアクアの声。
 その突然の声に、俺はもちろん、ダクネスまでもがビクリと震えた。
 現在ドアは開けっ放し。
 そして開け放たれたドアから咄嗟に廊下を振り向くと、そこには俺が落とした手紙がある。
 この流れだと、アクアが普通に手紙を拾い、宛名を確認。
 当たり前の様にこの部屋の中へ入る。
 俺はオロオロしながら部屋を見回す。
 と、目に飛び込んできたのはクローゼット。
 俺は、未だ片手でダクネスの口元を押さえたまま。
 なぜか震えているダクネスの手を掴むと、そのままクローゼットの方へと手を引いて……!
「……ッ! ……ッ!?」
 ダクネスが目を見開き、くぐもった声を上げながらも素直に俺について来た。
 なんだコイツ、やけに大人しい……。

 ……あっ!

 俺は自分が何をしているのか気が付いた。
 ダクネスは俺に片手を引かれている為、胸を隠す手が片っぽだけになり、それでも必死になって、泣きそうになりながら片手で胸を隠そうと……。
 何をしているんだ俺は。
 アクアに見つかって最低呼ばわりぐらいは甘んじて受けよう。
 俺は涙目になっているダクネスの、口元を押さえていた手を……。

「おやアクア、何してるんです? 手紙を引っくり返したり透かしたり」
 新手のめぐみんの声を聞き、俺は慌てて、クローゼットの中にダクネスを引っ張り込んだ。

 俺は何をしているんだろう、本当に何をしているんだろう。

「ダクネス宛ての手紙ですか? ……と言うか、部屋にいませんね。どこか出かけたのでしょうか」
 そんなめぐみんの声を聞きながら。
 狭苦しいクローゼットの中で、上半身裸のダクネスを、半ば押さえ込む形で密着していた。
「そういやカズマさんが居ないんですけど。二人でどこかへ行ったのかも知れないわね」
 部屋から聞こえてくるのはアクアの声。
 そんな話はどうでも良いから、とっとと出て行ってくれ!
 でないとヤバイ、本気でヤバイ!
 俺の顔の鼻先には、口元を押さえられ、涙目になったダクネスが……!

「おいっ、目を閉じるな! こっ、こらっ、何でお前はこんな時、そう簡単に諦めるんだよ、もっと頑張れ! 妙な空気になるだろうが、おい待て止めろ、胸を隠していた手を下ろそうとするな、いやとても良いんだがやっぱり良くな……」

 ありがとうございます、ありがとうございます

1 件のコメント:

  1. このHな短編だけコメントがない・・・

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